診療継続のために休保(キュウホ)が果たして来た役割とは 森 保団連共済部長(休保共済会専務理事)に聞く

保険医がけがや病気で休業した際の休業保障制度「正式名称:保険医休業保障共済保険」の加入受付が7年ぶりに開始されており、加入申し込みや問い合わせが寄せられている。

本制度は、1970年の制度発足以来、今年で43年目となり、4万人の保険医が加入している。 休業を余儀なくされ給付金を受給した会員から大変喜ばれており、保険医の診療継続を金銭的に支えることで地域医療を側面から支えてきた。

休業時の公的保障に乏しい保険医にとっての「休保」の役割や魅力について、あらためて森明彦共済部長に聞いた。

保険医が休業した際はどうなりますか?

森:日頃、患者さんの健康管理に携わる保険医ですが、自らの健康管理がおろそかになりがちです。開業保険医など保険診療(公共サービス)に携わる者でも、休業した際の傷病手当金等の公的保障の仕組みがありません。従業員の給与や代診手配などで診療継続をするためには、自らが備えるしかないのが現状で、備え無しでは安心して療養に専念できません。

開業保険医が休業した際の出費が気になるところですが、どれくらい備えればよいですか?

森:保団連社保部がこの程行った医科・再診料調査(下図)では、無床診療所(医科)の診療を継続していて1ヶ月にかかる経費は平均で249万でした。これらは、代診費用や従業員の賞与は含んでおりません。

無床診療所の1ヶ月における維持コストは平均249万円

「休保(キュウホ)」に8口加入されて、傷病により休業し、30日分の給付を受けた場合は、入院で192万円、自宅療養でも所定の通院をしていれば、144万円が保障されます。それでも足りないと思われる先生方もいらっしゃいますが、「休保(キュウホ)」は民間の所得補償保険と重複して給付されますので足りない分を補うことも可能です。

保険医自らの健康に不安を感じる時期や、休業に至るケースはどんな時ですか?

森:保団連政策部が行った会員の意識・実態基礎調査では、自らの健康不安を感じる医師が年齢上昇とともに増えています。医療経営環境の悪化が業務時間の増加に結びつき心理的にも肉体的にも健康に影響を及ぼしているのではと思います。

意識は「健康」でも、実際に休業に至った事例について統計データ(2011年度休保決算資料)で分析してみると明らかになります。直近3年統計値では、休業に至ったケースとして、疾病別で(1)悪性新生物、(2)血液・循環器系、(3)消化器系の順に多く、過去30年の通算統計を比較して悪性新生物による休業の顕著な増加が見られます。これらの疾病群が発生した時期や年齢層は、過去30年の通算統計(1980年2月〜2012年7月支払分)見ると傾向が分かります。悪性新生物では50代から多くなりますが、血液・循環器、消化器となると30代でも病気を罹患し休業に至るケースもあるようです。

「休保(キュウホ)」の約款では、加入申込資格として「加入時に健康であること」とありますので、病気をしてから加入申込みいただいても加入できない場合があります。健康に不安を感じる前に加入申込みいただくことが大切です。

悪性新生物グラフ
血液・循環器系グラフ
消化器系グラフ
傷病給付金・病名別支払件数分布
43年の制度運営の歴史を踏まえた実績はいかがですか?

森:これまでに休業を余議なくされた保険医は延べ23,000人、3,599,000日、延べ給付総額は、実に約1003億の給付金をお支払いしてきました。

これらの給付金は単に加入者である保険医本人が支えられるだけでなく、家族、従業員、患者さんまで支える原資になってきたと自負しています。

医療空白を埋めるべく先輩方が立ち上げ、維持・発展させてきた努力の賜物であり、保険医にはなくてはならない制度です。7年間、保険業法の規制で普及停止を余儀なくされましたが、今回、新たな加入者を迎え入れることができますので、多くの方にご加入いただくことで更に発展させていきたいと思います。

加入者推移画像
「共済保険」とリニューアルされましたが制度的な運営や仕組みは変わりましたか?

森:掛金額、加入時の掛金が満期まで変わらない仕組み、休業時の給付金(以下、傷病給付金)の額や給付限度日数は現行制度のままです。

また、脱退時に支払われる中途脱退給付金が削減されるルールを止めましたので、傷病給付の有無にかかわらず加入者全員に脱退給付金が支払われることとなり、文字通り掛け捨てでない制度となりました。

認可制度としてスタートするにあたり、保険計理人が関与し、保険数理に基づく健全性を確保することが求められ一部制度変更が余儀なくされましたが、認可要件をクリアすることができました。

医師自らが非営利で運営することにより掛金が安く据え置ける「共済」の良さを維持するとともに、保険の専門家が関与し、財務的にもより長期的に健全運営が続けられることとなりました。その点では、「共済」に「保険」の良さを取り入れた共済保険としてリニューアルできたかと感じています。

以上